・雨の記憶
雨が降ってる。
小学校の廊下の窓から僕はそれを見ていた。
たしか季節は夏だったと思う。
重たい雲が空を覆っていた。
昼なのにどんよりと暗くて、夕方なのか
朝なのかはっきりとわからなかった。
僕は休み時間中ずっとそれを見ていた。
1年生の頃だったはずだ。
不思議な気分になったのを覚えている。
憂鬱という気持ちを覚える前の、
ぼんやりとした気怠さのような
掴み所のないふわふわしたそれは
僕のなかをゆっくりと支配した。
それが雨を認識したはじめての記憶だ。
・夕焼けのジャングルジム
小学3年生の夏休み。
団地と団地の間にある公園は
軋むブランコと錆びた小さなジャングルジムが
あるだけで、滅多に人の来ないところだった。
雑草が適当に伸びてて、寂れていた。
僕はそこが好きだった。
ある日そこに行くと、男の子と女の子がいた。
なんでかはわからない。
その子たちと少し仲良くなった。
男の子は6年生で、女の子は5年生だった。
僕らは大して喋ることもなく、
ガムを膨らませてジャングルジムで
ぼーっとしていた。
夏休みの間、何度かそんな時間を過ごした。
夏休みが終わると、その子たちと会うことは
なくなった。
さよならもなにもなく、
当たり前のように別れて終わった。
電話番号もなにも聞いていなかった。
本当にそんな子たちがいたかどうかも
定かでなかった。
でも今でも思い出せる。
ジャングルジムで見た夕焼けも
味がなくなったガムも
女の子が漕ぐブランコの音も。
小さな夏の思い出となった。
・父親のポタージュスープ
小学校高学年になるまで、家族で
榛名山の近くで毎年キャンプをしていた。
夜はカレーを作って、飯盒で炊いたご飯を食べた。
ランタンの灯りに照らされたテントの中で
トランプをして、寝袋で眠った。
朝目が覚めると、父親がコーヒーを飲んでいる。
僕に気づくと父親はポタージュを
クノールのポタージュと小さなホットドッグを
作ってくれた。
普段料理をしない父親のそれが
やたら美味しかった。
朝の澄んだ空気の中で飲むポタージュは
なんだか僕を大人にさせてくれるような
くすぐったい味がした。
ps.今週の花はロッシュとマドリードという
バラ種でまとめてみました。
数日後がピークになるそうで、
今から楽しみです。
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