マラソン振り返りレポ
これは初めてフルマラソンをした際の
振り返りレポートである。
3月3日。桃の節句のひな祭り。
僕は朝っぱらから電車に乗って、
武蔵浦和駅に行き、
そこからバスで彩湖へ向かっていた。
マラソン大会に出場するためだ。
前日は有給を使用して、
入念なストレッチを行い
近所のスーパー銭湯で筋肉を癒した。
9時のスタートに照準を合わせるため、
20時半にはベットに入り
4時半には起床した。
なぜかすこぶるエロい夢を見てしまう。
僕は比較的夢をしっかり覚えている方だ。
なにもこんな日にみることはないのに、
走っている時に思い出してしまう。
朝食はしっかりと食べる。
うどんと菓子パンとバナナ。
炭水化物と糖分を蓄えておく。
シャワーを浴びて、ストレッチを行うと、
急にやることがなくなった。
走っている時に支えになるかもと
思ってZARD「負けないで」を聞く。
しっくり来ない。
布袋の「バンビーナ」にスイッチ。
どうも布袋の気分のようだ。
年に数回発生する【朝から布袋】の気分。
バイブスは満タン。
会場には既に何人ものランナーがいたが、
人数は多くない。
彩湖はあまり人気のあるコースではない。
周回コースをぐるぐると
回るのは気が滅入るのだ。
ぼーっとストレッチをしていると、
話しかけられた。
「すいません、水曜日のダウンタウン
という者なんですが…」
うわっ。水ダウだ。
「フルマラソンに参加するんですか?」
「はい、そうです。」
「その後って何か予定あります。」
「夜に飲み会に行きます。」
カメラを回されることなくこんな感じで終わった。
今調べたところ、5月16日の放送で、
【フルマラソン後にはなにも
予定入れない説】
をやっていたようだ。
スタート30分前に開会式
と準備運動があり、
公務員ランナー川内氏…のそっくりさんが
MCとして挨拶していた。
彼は走っていなかったが。
スタート5分前、位置に着く。
緊張感はまるでないが、
すこし感慨深さはあった。
走り始めて10ヶ月、
ついにフルマラソンだ。
楽しくも好きでもないのに走り続けて、
いよいよ目標の入り口まで来た。
フルマラソン完走。
死ぬまでに1回は経験しておきたいと
思っていたが、
意外とチャンスは早く訪れた。
完走できればだが。
今までの最長走行距離は30キロ。
リタイアはしたくないなぁ、なんて
考えていたらもうスタートの
ピストル1分前。
MCの呼びかけでみんなでガンバロー
と叫び、スタートした。
【1周目 スタート~7km】
最初の1周だけ2kmほど長い。
その後5kmを7周する。
都合8周。飽きるなぁ。
初めて走るコースなので、最初は真新しさも
あって快調に走れる。
日差しが強く、気温も上がってきそうだ。
目安のペースより少し早い。
落ち着け落ち着けと言い聞かせながら
足を運ぶ。
小さいアップダウンが2箇所。
ここが肝となりそうだ。
数キロ走ったところで、この大会のレベルが相当低いことに気づく。
参加者も少なかったし、
あまり速い人も多くなさそうだ。
【2・3週目 7km~17km】
このあたりはほとんど記憶にない。
マラソンには「30kmまで寝て走れ」
という言葉がある。
脳が糖分を使うため、
なるべくものを考えないで
走れということだ。
記憶にはないがくだらないことは
たくさん考えていた。
今日の夢はエロかったなぁ。
終わったらご褒美に何を食べよう。
ステーキか、寿司か。
目標タイムを突破すればいいステーキ、
目標タイム以下なら回転すし、
リタイアしたらやよい軒かなぁ。
前の奴の走り方気持ち悪いなぁ。
まだ3週目かぁ、飽きたな。
日差しがうっとうしいなぁ。
またあんな夢見たいなぁ。
【4週目 17km~22km】
少しずつ疲れと飽きが出てくる。
僕もよくこんなことするよ、という呆れと
そろそろ半分だ、まぁ頑張ろうという
気持ちが同居している。
気温が上昇しランナーに
とっては厳しくなる。
ペースはきっちりと守れている。
まぁこの調子なら
リタイアすることはないな、と思う。
【5・6週目 22km~32km】
いよいよ疲れが本格化してくる。
右足の腿に違和感を感じ始めたと思ったら
左足の膝にも違和感を感じる。
足の裏も痛くなってくる。
半分を突破し、ようやく本当のスタート。
それでもペースはなんとか守る。
ペースを落としても目標タイムには届くが、
今そんなことをしてはいけない。
次の給水はまだか、
それだけを考え足を進める。
【8週目 32km~37km】
地獄のスタート。
半分を超えてからがスタートと
思っていたがまるで見当違いであった。
残り10kmからがスタート。
マラソンには30kmの壁があり、
走りなれていないものは30km過ぎから
ガクッとペースが落ちるのだ。
僕は35kmからそれを感じた。
足が重い。体の感覚が遠くなる。
内臓が痛くなってくる。
肺が、胃が、せりあがっているような
感覚を覚える。
まだ走ることになれていなかったころ、
走り終わった時に内臓が痛くなったが、
あれがずっと続いている感覚だ。
ひどく苦しい。
ペースが落ちる。
足が、内臓が自分のものでは
無くなっていく。
人生で一番苦しい。苦しい。
リタイアが頭をよぎる。
歩きたくなる。
職場のランニング部のメンバーの顔が
思い浮かぶ。
止まってはいけない。
走らなければならない。
飄々とした顔で、「マラソン?楽勝でした」
なんて皆に言ってやろうと
走る前の僕は考えていた。
今は口が裂けても言えない。
小さい坂が恐ろしいほどの高さに見える。
僕を苦しめる。
なんでこんなことしてんだろうか。
何回も何回も繰り返す。
それでも足は止めない。
【9週目 37km~ラスト】
どんどんペースは遅くなる。
あと少しで40km、
あと2kmでゴール、
あと1kmで…
1kmを、500mを、100mを
ひたすらに刻んでいく。
ランニングウォッチを見て、
自分のペースの遅さと、それでも確かに
ゴールが近づく喜びをかみ締める。
あと少し。もう少し。
走る。
走る。
走る。
ゴール。
3時間18分。
目標の3時間30分切はできた。
15分は切れなかったが、まぁ初めてに
しては上出来の部類だろう。
ゴールにはスープや果物が用意されていた。
スープを3杯、果物を4,5個食べて、
自分がおなかを空かせていたことに気づく。
もう筋肉痛が来ている。
足がふらふらだ。
満足感が特段あるわけではない。
「フルマラソンを走った」
という経験が残っただけである。
もう二度と走りたくない。
タクシーを使って帰りたい。
でも明日になればまた来年も走ろうとか
考えだすのかもしれない。
たぶん考えるだろう。
そしてまた走るだろう。
マラソンは人をバカにさせるようだ。
5000円払って大会に参加し、
死にそうな思いで42.195kmを走り、
僕はバカになった。
これが僕の初めてのフルマラソンだった。
PS:走った後のビールが上手い
のは20kmくらいまでで、
普通にスポーツドリンクが
飲みたくなりました。飲みました。
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