6月27日の11時40分。
僕は上野東京ライン下り 宇都宮線直通に乗っていた。
八重洲での飲み会が終わり、赤羽まで 帰る途中であった
。電車はまずまずの混み具合で 皆お疲れ様ですなぁ、
なんて気楽なことを考えて僕は スマホをいじっていた。
突然、小さな悲鳴が聞こえて
隣の女性が僕の方にぐくっとぶつかってきた。
なんだなんだ、急停車したわけでも無いのに。
誰か倒れたのだろうか。
ふと横を見ると、青ざめたサラリーマン ドア付近でふらふらしている。
足元には瀉物物。
一瞬で理解した。
僕は座席真ん中あたりにポジショニング
して いたため、被害を被ることはなかったが、
嫌なもん見ちまったな、と思った。 だが嫌なものこそ目が離せない。
ちらちらと現場を伺うとドア付近の椅子(一番いいポジションだ)に
座っていた女性のスカートや
靴に少し かかってしまっていることが伺えた。
女性はティッシュ何枚も使用して拭いていた。
少量だったのは不幸中の幸いだろうか。
僕はこの時、女性の彼氏に同情していた。
女性の隣に座っていた彼氏は彼女に ティッシュを手渡していた。
彼氏はどうすることが正解だったのだろうか。
リーマンに怒ることだろうか。
酔っ払いに怒ったところでどうこうなるとは思えない。
電車を降りてトイレに行って綺麗にし、
自分のお金でタクシーを呼ぶのがよいか。
だが、彼らの目的地が宇都宮だったら それは現実的ではない。
酔っ払いは尾久でふらふらと降りていき、
カップルは座席に座ったままであった。
二人の間に流れている空気はもはや 澱んでしまった。
物理的にも比喩的にも。
自分が彼氏の立場だったら…と思うと
心の底からぞっとした。 僕は彼氏に同情し、
つくづく自分がその立場でなくて よかったと思ってしまった。
本当に情けないと思うが、この状況に僕がなったら
どうしてよいのか全くわからない。
やはりティッシュを渡して、 本当にツイてないね、
参っちゃうねとか 言うのだろうか。想像もできない。
赤羽で降りた僕は南口から自宅までの帰り道に
いくつゲロがあるかを数えながら、 ここで吐けた奴はまだよかった、
誰も不幸にさせてはいないだろうから…と思った。
PS:ネットで調べるとさまざまなゲロ話があり、十人十ゲロだなと知らされた。
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