健康診断でE判定が出た時僕はＶ模擬を思い出した

健康診断の結果が返ってきた。

 僕の予想ではγ‐ＧＴＰが少しオーバーして

 Ｂ判定になっちゃうかな、くらいの感覚だった。

 それがまさかのＥ判定。 

要精密検査である。

 この結果を見て、僕は笑ってしまった。

 Ｅ判定て。志望校変更しなきゃじゃん。

 僕は「Ｖ模擬」のことを思い出した。

 Ｖ模擬とは高校の合格判定をする模試で、

 受験シーズンとなった僕らは盛んに 

「次のＶ模擬行かねぇ？」などと言っていた。

 その語感の良さ、休みの日に地元を抜ける

ということが 僕らをくすぐりにくすぐっていた。

 ある日もそんなＶ模擬行く行かないの話に なっており

、行かない奴も行く奴と一緒に 会場付近まで行き、

試験の間適当に遊び、Ｖ模擬が 終わってから

合流して遊ぶというプランができていた。

 僕は行かない派として参加する流れだった。

 この時、都営500円一日乗り放題という

非常にお得な 切符があり、僕らはこれを使い東京を制覇しようと 考えていた。

 まずはアメ横に行こうか、いやいや浅草に行こう、

 などなど話し合っていた。 

いざ当日。

Ｖ模擬会場は水道橋だった。

僕は電車内で 行き先を話した。

「最初は東京タワー行こうぜ」

 みんなの反応は 

「は？」

「え？」

「お前Ｖ模擬は？」

 まさか。

 嘘だろう。 

嘘だといってほしい。 

「みんな、Ｖ模擬行くん？」 

僕はか細く震えた声で聞いた。

 皆が笑った。

 「受けねー訳ねーだろ」

「お前なんで乗ったんだ」

「アホか」 

あぁ。

 行かない派の人間はどこに行ったんだ。

 僕が見たプランは幻だったのか。

 なんてこった。

 みんなそんなにＶ模擬に真剣だったのか。

 そんなバカな。 

 満面の笑みで水道橋を降りていく皆を尻目に、

 僕は三田線に取り残された。

 その後僕は一人で東京を巡った。

 楽しかった。

 ＰＳ：Ｅ判定の箇所は心臓でした。

          ペースメーカーを植え込むと

         電動卓で麻雀ができなくなるので、

 　　その際は命を削って打つことになりそうです。