魔女の朝

11/17 AM8:20
俺は赤羽の立ち飲み屋「桜商店」にいた。
やるせない出来事が起こり、
朝から酒を飲むしかないと思った。

そして飲んだ。

タバコを吸いながらビールを飲む。


朝のビールは苦い。なんだか俺を責めてるようだ。

タバコの煙が目に染みる。
タバコまで俺を責めているようだ。


ええい、もっと飲んでもっと吸って、
なんもかんもわからなくさせちまおう。

勢いに任せてホッピーを注文、
煮込みも頼んで本格的な飲酒が始まる。

そんな折、ちらちらとこちらを伺う視線がある…
さっと確認すると、
アグネスチャンを50回殴った後の
ような顔をした中年の女性がこちらを見ているではないか。


うむ。
こいつ。
確実に絡んでくる。


女性はトイレに向かう途中こちらに視線を飛ばす。

トイレから出てきた時はもうまっすぐに
こちらに視線を飛ばしてきている。

圧がすごい。
顔の圧が。

「うわぁ、お兄さん脚なが~い!」

「なが~い」のところで吐き気を覚えた。
なんなんだ、この嫌悪感は。

昔酔っ払った女性を助けた時に
恐ろしい口臭のディープキスを
されたことを思い出した。

しかし、今はやぶれかぶれ。

とりあえずコイツに話を合わせてみよう。
そのまま話すこと、数十分。


真打はやってきた。



一見してわかる負の香り。

チンピラ、ダフ屋、ピンサロ嬢を引き連れて
立ち飲み屋にやってきた老婆、通称"魔女"


「おらぁ朝から銀行強盗してきたぜ」


バックから裸のままの万札を投げる。

アグネスがそれに飛びつく。
そんなアグネスの手から万札を奪い

「おめぇみたいなブスにやる金はねぇ!!!」

入店からわずか10秒足らずで、
魔女は魔女たる所以を見せつけた。

その後の会話でアグネスと魔女が知り合いで
あることがわかり、
これも一種のコミュニケーション
であることがわかる。

が、アグネスは本気で魔女から毟ろうとしており、
それを知ってか知らずか魔女は
アグネスを10回罵倒し、1回褒め、
金が絡むと101回罵倒していた。

俺はすべてをホロ酔いに任せて誘いに乗るまま
「俺、アグネス、魔女」のパーティで
朝キャバクラへと流れ込んだ。

魔女の行きつけであるキャバクラで
気まぐれにアグネスを罵倒する魔女を
肴にワインを飲む。

金をばらまく魔女。

罵倒に傷つくアグネス。

こそこそと笑う常連客とキャバ嬢。

それを眺める俺。

得体のしれない気持ちが沸き上がる。

魔女は金があるから相手にされる。
そして影では笑われている。

アグネスは魔女の言葉に傷ついたそぶりを
見せるが、
その関心は魔女の金が源泉である。

それを見て笑い煽るキャバ嬢。常連客。


これは一体なんなんだろう…

得体のしれない感情が胸の中に沸き起こる。

これが社会なのか…。





考えるだけ無駄である。

俺は目の前のワインを飲み干し
デンモクから「田園」を打ち込んだ。


赤羽のキャバクラで、俺は玉置浩二となった。





PS.玉置浩二も絶対シャブやってると思います


今日も何かを間違えた

日々の中で間違えたこと ずれたことを綴ります。 岩崎キリン:iwa191cm@gmail.com

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