【昼休み】
昼休み。僕がいつものように職場の
シンクで弁当箱を洗っていた時、
「ちょっと流していいかな？」
と後ろから声をかけられた。
副本部長であった。
彼の手には冷やしたぬき蕎麦の
容器、そしてそこに残り汁があった。
このまま捨ててはゴミ箱が汚れる。
よってシンクで流す。
これはよくあることだ。
僕は副本部長にシンクを譲った。
副本部長は残り汁を捨てると、
水道のレバーを上げ、水を出した。
その勢いが強かった。
あまりに強かった。
飛び散る水。
シンクはびしょびしょ。
脇にいた僕も副本部長も濡れた。
「ごめんね」
ぽそっととこぼして、
副本部長はそそくさとでていった。
僕は笑いながらシンクを布巾で拭いた。
彼は副本部長、僕より遥かに偉いし、
英語も堪能である。
しかしことシンクに関しては僕の方が上。
シンク・びしょびしょ・バイリンガル。
Ｓ Ｂ Ｂ
僕は彼を心の中でそう呼んでいる。
【金持ち息子のイメージ】
昨日車で晃一氏が呟いた。
「あのクリニック、すごいな」
なるほど彼の視線の先にはおしゃれで
きれいなクリニックがあった。
清潔感が溢れていそうで、評判も
よさそうだ。近所のママ達も
話題にしているに違いない。
さらに続けて彼はこういった。
「あそこは儲けてんだろうなぁ。
息子もドラ息子なんだろうなぁ。」
その言葉には侮蔑の意識が含まれていた。
どうせ金持ちなんて、といった
やっかみがありありと感じられる。
「きっと虫も触れやしない」
僕はこれを聞いて笑ってしまった。
虫て。
金持ちに勝るポイントが
『虫に触れる』って弱すぎないだろうか。
更に言うなら、彼も虫が苦手で触れない。
その旨を伝えると、
「俺も虫を触れない、
だから俺は金持ちになれる。」
おそろしい理論を展開させている。
この理論でいくと都会育ちの女子高生の
９割以上が金持ちになってしまう。
でも脂ぎったおじさんたちよりも、
かわいくて綺麗な女性がお金持ちな方が
なんとなく気分がいいので、
心の中で僕も彼に同意した。
【自称とび職】
yahooではニュースをＬＩＶＥで流している。
僕は昼休み中に、弁当を食べながら
それを見ていた。
８０代の男性が殺害されたニュース。
犯人は２人の男で、１人が１９歳無職。
もう１人が４０代の自称とび職と出た。
自称とび職？
自称とび職ってなんだ？
自称小説家ならわかる。
なんかくすぶってて、小さい賞を
もらったくらいで出版も契約もしてないのに
「俺、小説家だから」
とか言ってる感じのやつ。
自称コンサルタントもわかる。
適当にそれっぽいことを言って、
セミナーと称して小銭をせしめる。
自称アイドルもわかる。
痛い女。
うん、わかる。
しかし自称とび職となると
意味がわからない。
とび職って自称できるものか？
建築現場の高所で作業する人を
「とび」と呼ぶ。
これはもう、それを行わなければ
そう呼ばれることは決してないはずだ。
自称とび職。
高所じゃなくて低所なんだろうか。
小学校のうんていのボルトを締める。
幼稚園の滑り台のネジを締める。
ジャングルジムに防サビ剤を塗る。
こういうことをしていたのだろうか。
なんだかいい奴に思えてきた。
うーん。
ミステリー。
追記：出前のピザを取りたいんだけど、
一人では勇気が出ません。
でも大勢だとお腹いっぱい
食べることも
好きな味を食べることも難しい。
僕はこれを一人暮らしの
ピザジレンマと呼んでいます。
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