ある朝

目を覚ますと性器が屹立していた。

勃起。
間違いなく勃起である。

僕はしげしげと自分の性器を眺めた。

うーん。
なんともしっくりこない。
愛着はあるが、しっくりはこない。
自分の股にこんなものがあるなんて。


しっくりこないが、100%の勃起を
している性器というのは、なかなか良いものだ。

本分を全うしている感じがある。

そのまま性器をつまんで下に引っ張り、
ぱっと手を放す。

ぱしっ。という愉快な音が寝室に響く。
僕の腹に性器が打ち当たる音である。



ぱしっ。ぱしっ。



何をしているんだろう。

そう、僕は性器について考えていた。
性器がしっくりこないことについて
考えていたはずだ。

果たしてこの性器は大きいのか、小さいのか。
どこから大きくて、どこから小さいのか。

僕はなんとなしに、スマホを横に並べてみた。

うーむ、近い。
スマホとサイズが似ている。

となると女性器にはスマホと同サイズの
長さのものが入っていくわけだ。

えっ…?
怖くない…?
体内にこのサイズのものが入ることを
想像すると、ムム…となった。


女性はすごいな…。


またまじまじと眺めると、
形が気になった。

この形は変なのか、変じゃないのか。

いや、そもそも男性器の形は
どこかユニークというか、間抜けに思える。
ちょっとアホっぽい気がする。

それに比べると女性器には真剣みがある。
上手く言葉にはできないが、なんとなく
シリアスな気がするのだ。

少年漫画に男性器が登場するなら
「ババーン!」「ジャーン!」
などという音が似合う。

これが女性器になると
「ゴゴゴ……」「ズズズズ…」
となりそうだ。

男性器がフランクな同僚だとすると、
女性器は物静かな上司。
ネクタイを締めて向かう必要がある。

いつまでも性器のことばかり
考えていられない。
顔を洗いに洗面所へ向かう。

顔。
自分の顔もしっくりこない。

まず、目。
なんだか幼いころより目が大きく
なったように思える。
というか、顔の肉が落ちたのか。

そのせいか、変に目が開くようになり、
違和感がぬぐえない。

ひげが生えている。
ぽつぽつと生えている。
このひげというのにもまったく馴染めない。

いつからか生えるようになったこれは、
全く不必要ながら結構な速度で再生する。
違和感のある顔に、さらなる違和感をプラスする。

無視しても話しかけてくる
馴れ馴れしい関西からの転校生みたいな存在。
ひげ。

鼻と口に至ってはたいして意識したことも
ないし、意識してもぜんぜんわからない。
まったく大した特徴が無いように思える。


デカ鼻晃一くんのように大きくはない。
大きくない。それだけである。


耳。ちょっと大きい。


全体。ほくろが多い。


顔を改めても、やっぱりなんとも
しっくりこなかった。

もっと考えると、自分の声にも
自分の全身にもしっくり来ていない。

声は妙に高いし、背はとても高い。

アンバランスすぎないだろうか?

となると、僕はこの肉体がまったく別の
肉体になっても自信を持って
「自分は自分である」
と言い切ることができるのだろうか。

140cm32kgくらいの華奢な女子小学生に
なったところを想像した。

ケインミントを吸いながら孤独のグルメを
見てにやにやする女子小学生。

冷蔵庫のチョコパイが尽きていて
絶望に打ちひしがれる女子小学生。

新しいマウスウォッシュの後味が
コーラの香りでちょっとうれしい女子小学生。

うん。

意味が分からない。

まぁ、意味が分からない日があってもいい。


PS.金くそって、なに?

今日も何かを間違えた

日々の中で間違えたこと ずれたことを綴ります。 岩崎キリン:iwa191cm@gmail.com

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